ドラムスローン(イス)の座り方。セッティングは高さ、深さ、距離が大事
ドラムスローン(イス)は自身の体のポジションを決める重要な基点となります。体に対してドラムセットをセッティングするので、その基点となる位置付けをする役割をイスが担っているわけです。
体勢が悪いと安定したリズムやフレーズを叩けません。無駄な力が入って疲れやすくもなるでしょう。
わかりやすく例えると、自転車です。自転車に乗ることを想像してみて下さい。座るサドルの位置が高すぎると安定感を失って転倒しやすくなりますし、低すぎると漕ぎにくくなります。座る位置によっては重心のかかり方が変わるので安定感も違ってきます。
同じようにドラムのイスの高さや座る位置で叩きやすさが変わります。ドラムはたくさんの楽器をセッティングする必要がありますが、まず1番に考えてほしいのはこのイスです。土台がしっかりできていないとその上に何を乗せても不安定になります。
イスの座り方をマスターして、まずは自分の体の状態を最適にすることから始めましょう。
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ドラムを叩く時の一般的なイスの高さとここでの基準
一般的にイスの高さは、『ペダルに足を乗せた状態でかかとを上げた時、ひざが水平より少し下がるぐらい』と言われています。
ドラムをやったことのある人はイスのセッティングにおいて1度は聞いたことがある表現なのではないでしょうか。私も最初はそうしていました。
ただ、個人的には『ひざが水平になる』ようにした方が良いと考えています。その理由は『少し下がるぐらい』というのがあいまいな表現だからです。
まったくの初心者であれば、その下がるがどれくらいなのかさえわからないと思います。であれば、平行な状態からどれくらい下げるのか、または上げるのかを判断した方がわかりやすいと思います。
もちろん、少し下がるくらいがどれくらいか明確にわかっていて、かつそれがやりやすいというのであれば最初からそうしても問題はありません。多少の上下であれば誤差の範囲なので大丈夫でしょう。
ただ、人それぞれで下がり具合の度合いが違う以上、あいまいな表現は避けた方が無難と考えます。よって、ここでの基準は『ペダルに足を乗せた状態でかかとを上げた時、ひざが水平になる高さ』とします。
これが基準となるイスの高さです。ここから始めて高さを上下させていきます。
イスの高さによる違い
高くする
足を上げる動作が最小限で済むので踏むのが楽になります。楽な姿勢というのはそれだけで利点になります。
ただし、高すぎると地に足がつかないふわふわした状態になって逆に不安定になるので注意が必要です。
後、これは個人的な意見なんですが、イスが高いとそのぶん体がピョコっと出てしまうので、見た目が若干ダサいと感じます。そこだけがネックですね。
低くする
重心が下がるのでパワーが出しやすくなります。どっしり構えられるので体の安定感も増します。
ただし、足を上げる作業で疲れやすくなります。体に負担がかかり、特に腰に疲労がたまりやすいです。日常的に腰や背中に違和感が出るようなら低くするのは避けた方が良いでしょう。
ドラムセットは低くできる限界があるので体の位置によっては叩きにくくなる場合があります。たとえば、タムなどはバスドラムの上にホルダーで設置することが多く、その構造上それ以下まで下げることができません。打面の角度で調整しようにも限界があるので、叩きやすさを考慮するとあまり低くしすぎない方が良いです。
イスに座る深さ
深さというのはイスの手前か奥かの判断です。基準としては中心、体の軸がイスの中心(真ん中)に来るようにします。
浅く座る
足が動かしやすくなります。ただし、バランスが不安定になりやすいです。浅すぎると勢いづいた時に落っこちる可能性もあります。私は落っこちた経験はありませんが、傾いて焦ったことが何度かあります。
深く座る
イスにしっかり体重を乗せられるのでバランスが良くなります。ただし、深すぎると座面が邪魔して足が動かしにくくなります。
イスの位置
基準はペダルに足を置いた状態でひざとすねが直角になる距離にイスを配置します。足で踏む力を伝えやすいです。
足を伸ばさなければならないほど遠いと踏みにくく、力が伝わりにくいです。ドラムセットとも遠くなるので物理的に届かなくなり、ミスショットにつながります。逆に近すぎると窮屈で踏みにくくなります。
距離感は自分でしか把握できないので最適な場所を探し当てましょう。
椅子に座った時の足の開き具合
キックペダルとハイハットペダルの位置、間に挟むスネアの間隔で変わってくるので基準は明言できません。ただ、ドラムセットを叩いている最中の足の位置を確認してみてください。叩いている時こそ、やりやすい間隔というのは決まってきます。
ペダルのプレートにも踏むベストな場所がありますが、極端に距離が合っていない場合は気付かないうちにそこからズレていたりします。最初はベストポジションとしてセッティングして踏んでいたにもかかわらず、気が付いたらそこからズレていた場合、足の開き具合、すなわちバス、ハイハットなどの間隔が自分には合っていないことを表しています。
最初はやりやすい幅を測るのもいいでしょう。特に初心者のうちはセッティングに慣れてなくて場所がころころ変わってやりにくい思いをすることもあります。足の開き具合の幅がわかればそれに合わせてバスドラム、ハイハットをセッティングします。2つの位置が明確になれば、後はそこが基点となってどんどん決まっていくので、いつも変わらないセッティングができるようになります。
ちなみに私はツインペダルを多用しますが、シャフト(左右のペダルを連動させる連結棒)に印をつけています。いつも踏んでいる幅がどれくらいなのかを記録しているわけです。「今のこの間隔が最適だ!」と思ってもどれくらいなのか目視のみで正確に測るなんてできないので、それなら数値化しておく方が確実だと思います。
イス本体の調整の仕方
各ネジの説明
- 台座(クッション部)の回転を制御するネジ
- 高さを調整するシャフト(スクリュー)を制御するネジ
- 脚の開閉を調整するネジ
イスはシャフト(スクリュー)を回転させて上下させます。簡単に言えば、ネジを締めたり緩めたりする要領です。ただし、シャフトをそのまま手に持って回転させるわけではありません。シャフトは潤滑剤が塗ってあって触ると汚れるのでやめておきましょう。回転させるのはシャフトと連結させた台座です。
高さの調節方法
まず、①のネジを締めます。
次に、②のネジを緩めた状態で台座を回転させます。
時計回りに回せば下がって、反時計回りに回せば上がります。
イスの高さを調整した後は②のネジを締めます。
最終的に①と②のネジは締めておいた方がいいです。
②を締める理由は高さを固定するためです。普段のイスの高さにした後は変わらない方が良いので固定します。
①を締める理由は微妙なズレをなくすためです。体の位置はできるだけずれない方が好ましいです。上下はもとい左右であってもそうです。オーソドックスな4点セットなら体をひねる場合も範囲が限られているのでイスを回すほどではありません。むしろイスの回転で角度が微妙に変わってやりにくくなったりするので固定した方がやりやすいと思います。
ただし、多少なりとも左右に揺れる方が柔軟に動けてやりやすいというのであれば別です。後、『高さを変えずに回る必要がある場合』も①を緩めると楽です。たとえば、体の斜め後方などにドラムを拡張するセッティングの場合は体ごと回らなければやりにくいでしょう。その都度、体をひねったり座り直したりするよりは、台座ごと回転させた方が楽なので緩めておきましょう。
脚の開閉具合
③の脚の開閉を調整するネジについてはあまり気にする必要はないと思います。多少揺れても傾いたり倒れないように幅をもたせて開き、ネジを締めておくだけでいいと思います。
ただ、1つだけ盲点なのは、イスを低くセッティングする人です。たまに台座を限界まで下げてもまだ下げ足りない場合があります。その場合は脚の開き具合を確認してみましょう。
1度どこかに運んだ後に置いたのでしょうかね。中途半端に開いた状態で置いてある場合があります。この場合はどれだけ台座を下げても普段の位置に来ないので、そんな時はまず脚を開いて下げてから、あらためて台座を回して高さを調整します。
私も過去に高さが合わずにやりにくいと思った経験があります。メーカーによって合う・合わないがあるのだろうとあきらめていましたが、ある時イスの調整でネジを触った時にふと気付いたわけです。脚があまり開いていないことに。
それを開いて座ってみると思った以上に低くなって驚いたことがありました。なるほど、メーカーではなく脚の開き具合が高さに影響していたのかと。普通に考えたらわかりそうなものですが、置いてある状態じゃないと駄目という先入観が、それに気付かせないほど視野を狭めていたのでしょう。ドラムを始めて間もない時には良くあることです。イスの低さで思うようにいかない人に少しだけ書いておこうと思いました。
脚の向き
私が個人的に注意しているのは脚の向きです。前のめりになっても傾かないように脚の1本は体の前の位置(両足の間)に来るようにしています。イスに座った状態で下を見た時、逆ハの字型だと妙にぎこちなく感じます。勢いづいて叩くと前のめりになる場合もあって、そんな時でもグッと支えて微動だにしないイスの状態が好ましいと思っています。イスの高さも位置も問題ないのになぜか不安定感がある場合は脚の向きを変えてみてはどうでしょう。支え方が無意識に影響しているのかもしれません。
※ちなみにこのページに掲載している写真では逆ハの字になっています。これは見やすさを考慮しているためです
イスのセッティングの基準をおさらい
長々と書いてしまいましたが、言いたいことは単純なのでここでおさらいしておきます。
高さ:かかとを上げた状態で足をペダルに乗せた時、ひざが平行になる高さ
深さ:体の軸がイスの中心(真ん中)に来る深さ
距離:ペダルに足を置いた状態でひざとすねが直角になる距離
ここでは基準があいまいな表現にならないよう、あえて角度や距離がわかりやすくなるように書きました。もちろん、極端な状態にならないようにも配慮しています。誰に対しても同じでわかりやすい明確な基準がないと混乱します。違いは比較するからわかることであって、比較対象がないと違いすらわからなくなってしまいますから。
基準は基準であってそこから変えていくのが前提
上記の基準をもとに自身に合うセッティングを微調整していきましょう。基準がそのまま完璧に合うことはないと考えてください。もちろん、合う人もいるかもしれませんが、それはそれで何も問題はありません。
自分に合うイスのセッティングを見極めよう
もし、現状でドラムが叩きにくいと思っているなら、まずは基本中の基本であるイスのセッティングを疑ってみてはどうでしょう。
ドラムセットが何かしっくりこない感じがしたらイスのセッティングを見直します。個別でそれぞれセッティングが悪い場合もありますが、楽器の位置なのか、それとも根幹である体の位置なのかを把握するためにも、1度ここで初心に返ってみましょう。
基準を参考にいろいろ試してみるのもいいでしょう。多少露骨なセッティングになっても試すだけなら大丈夫。どう影響するのかを見極められます。
特に足の動かしやすさは念入りにチェック。
そして、できれば実際にドラムセットを叩いて確認してください。イスだけで判断は難しいです。叩かずして本当のやりやすさというのはわからないので、やはりドラムを叩いて判断するのが1番です。
結局、最終的にやりやすいかどうかは自分で判断するしかありません。1度決めたら絶対に変えてはならないわけでもありません。むしろ、1回で決まることはまずないと考えましょう。
現在の自分の成長段階や経験値、フォームの改善によって変わってくることもあります。臨機応変に対応してしっかり決めていってください。